傷口の消毒で触れたきみの足指のやわさを忘れずにいる
短い歌と書いて短歌と読む。
岡野大嗣に出会って短歌にはまったことを父に話したら「むかし短歌にのめり込んでいたことがある」と言われた。大学時代に強化合宿なるものに参加し、仲間と批評し合いながら言葉を紡いできたと語る父は、はじめて見る顔をしていた。そんな父が昔詠んだものをひっぱり出してきたので見てみると、なんだか緑の風が吹いてくるようで、知らない父の知らない日々にすこし触れられたような気がした。
そんな父の短歌に体があつくなってきたわたしは気づくと机に向かっていた。しかしぽろぽろ言葉をこぼすことはできても、定型にはめ込む経験は乏しく、ときめくような言の葉は落ちてくる兆しもない。そんななかでどうにか頭を回転させて一応の「短歌」なるものを編み出した結果がタイトルの言葉である。
世の中の歌人への尊敬の念を抱かずにはいられない。