花屋
とくに理由はないけれど
自分に花をあげたくなった
しかし駅前の色鮮やかなあそこでは
なんとなく買いづらそうで気が引ける
帰り道にそんなことを考えていたら
たまにふらっと立ち寄る喫茶店のとなりに
花屋があったことを思い出した
スピッツの恋のはじまりの『花屋覗いたりして』
の部分を脳内再生させてみる
そんなこんなでお店の前まで来た
覗いたあの瞬間
大袈裟じゃなく
世界は変わった
空間が、色が、葉が、枝が、生きていた
なにもかもがそこに光り輝いていた
たしかな息吹を感じた
感動のあまり、しばらくドアのところで突っ立ったままだった
お店の方の視線に気づき
止まった時が動き出したように足を進めた
ピンときたものを1種類だけ買うと決めてお店をまわり
不思議な色のチューリップを2本買った
恋しい日々と花束を抱きしめる
きっとまた、わたしはここへくるだろう
ドキドキを持ち合わせながら
ドアの向こうを想像しながら
生きている、と感じながら